2026-07-15

AIショッピングアシスタントが小売投資の首位に浮上、EC運営者が今なすべきこと

ここ数年、EC運営者の間では「アプリを作るべきか」「会員サービスを充実させるべきか」といった議論が中心でした。しかし2026年に入り、投資の優先順位そのものが大きく変わりつつあります。Visa Acceptance Solutionsが委託したPYMNTS Intelligenceの調査によると、小売企業が最も投資したいと考えるデジタル分野は、もはや決済機能やアプリではなく「AIショッピングアシスタント」になっています。本記事では、この調査結果と業界の動きを整理し、EC運営者が今取るべき対応を考えます。

調査結果:投資優先度の首位はAIショッピングアシスタント

本調査は米国・ブラジル・UAEの消費者5,841人、加盟店1,185社を対象に実施されました。主なポイントは以下の通りです。

  • AIショッピングアシスタント(AIが商品の検索・比較・購入手続きを自動で行う仕組み)が、小売企業のデジタル投資先として最も頻繁に挙げられた
  • 一方で、複数の決済チャネル対応、決済情報の保存、モバイルアプリといった「これまでの標準機能」への投資は縮小傾向にある

つまり、従来型のデジタルコマース基盤への投資から、AIを軸にした購買体験への投資へと、資金の流れそのものがシフトしているということです。

消費者側でもAI利用が急拡大

投資シフトの背景には、消費者行動の変化があります。

  • 直近の購入において、オンライン購入者の47%が商品比較や情報収集にAIを利用したと回答
  • 64%が「今後2年以内にAIショッピングエージェントを利用する」と予想

商品を探す・比較する段階で人間がAIに頼る割合が、すでに半数近くに達している点は見逃せません。今後2年でこの傾向がさらに強まると消費者自身が認識していることも重要です。

業界全体で進む標準化の動き

この投資シフトは、単発の流行ではなく業界横断的な動きに支えられています。Googleは2026年1月のNRF(全米小売業協会の大会)で「Universal Commerce Protocol」を発表しました。これは、複数の小売企業やAI企業が共通で利用できる、エージェント型商取引のための技術規格です。Shopify・Etsy・Wayfair・Target・Walmartと共同開発され、Visa・Mastercard・Stripe・Amex・Best Buyが支持を表明しています。決済からEC大手まで幅広いプレイヤーが足並みを揃えていることから、AIエージェントによる購買が一過性のトレンドではなく、業界標準として定着に向かっていることがわかります。

EC運営者への示唆

こうした変化を踏まえ、EC運営者が見直すべきポイントは次の通りです。

  • チャットボットや会員サービスなど「人間向けUX」への投資対効果を再検証する
  • 構造化データ(AIや検索エンジンが商品情報を正確に読み取れるよう、ページ内の情報を整理して記述する仕組み)の整備を進める
  • AIエージェントとのAPI連携(システム同士が情報をやり取りする仕組み)や、エージェント対応の決済フローを検討する
  • ロイヤルティ施策一辺倒ではなく、「AIに選ばれる」ための情報発信、いわゆるAIO/GEO(AIに自社の商品や情報を発見・引用されやすくするための最適化)に取り組む

自社サイトがAIエージェントにどの程度発見・評価されやすい状態にあるかを把握することは、今後の投資判断の出発点になります。現状を客観的に確認したい場合は、AIOチェッカーのようなツールで自社サイトの状態を点検してみるのも一つの方法です。

まとめ

PYMNTSの調査は、小売業界の投資優先度が「人間向けデジタル機能」から「AIエージェント対応」へ移っていることを示しています。消費者側でもAI利用はすでに広がっており、Googleを中心とした業界標準化の動きも本格化しています。EC運営者にとっては、従来型UXへの投資を見直しつつ、AIに選ばれる構造づくりを進めることが、今後の競争力を左右する重要な論点になりそうです。

参考

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