AIエージェントが人間に代わって商品を探し、比較し、購入まで済ませる「エージェントコマース」が、2026年に入り現実の売上を動かし始めています。ここ数週間の各社の動きと調査データから、EC運営者が今おさえておきたいポイントを整理します。
AI経由の購入が急拡大している
AIエージェント(利用者の指示を受けて自律的にタスクをこなすAIプログラム)による注文は、2025年1月から2026年1月の1年間で15倍に増えたと報告されています。米国では2025年のブラックフライデーで、AI経由の小売サイト流入が前年同月比で805%増加しました。
コンサルティング大手のマッキンゼーは、エージェントコマースが2030年までに世界の小売支出のうち3〜5兆ドルを動かす可能性があると試算しています。まだ全体から見れば小さな比率ですが、伸び方が急である点は見逃せません。
主要AIプラットフォームが購入機能を実装
ここ数か月で、生成AI各社が「AIの中で買い物が完結する」仕組みを相次いで実装しています。
- ChatGPT:米国のユーザーがEtsyの出店者から直接購入できるようになり、100万を超えるShopify加盟店への対応も進むと発表されています。
- Microsoft Copilot Checkout:米国で稼働し、Shopify・PayPal・Stripe・Etsyと連携しています。
- Google:検索の「AIモード」やGeminiを通じて、事業者と利用者をつなぐ仕組みの提供を進めています。
いずれも米国が先行ですが、こうした機能は国境を越えて広がる傾向があり、日本のEC事業者にとっても他人事ではありません。
「ゼロクリック購入」という変化
これらの動きが示すのは、消費者がサイトを検索して訪問し、クリックして買うという従来の流れを経ずに購入が成立する「ゼロクリック購入」の広がりです。利用者はAIに希望を伝えるだけで、AIが候補を選び、決済まで代行します。
この世界では、サイトへの流入そのものが減る一方で、「AIに選ばれるかどうか」が売上を左右します。検索エンジンで上位に出す従来のSEOに加え、AIに正しく理解され推薦されるための最適化(AEO=AIエンジン最適化)が新たな課題になります。
AIに「見つけてもらう」ための準備
AIエージェントは、人間のように画面を眺めて判断するわけではありません。構造化されたデータを読み取って商品を把握します。専門家が指摘する準備の要点は次の3つです。
- 構造化データ(JSON-LD)の整備:商品名・価格・在庫・レビューなどを、機械が読み取れる形式で明示する。
- AI向けのサイト設定:AIのクローラー(情報収集プログラム)がアクセスできるよう、サイトマップやアクセス許可を適切に設定する。
- 商品カタログのAPI公開:在庫や価格を外部から取得できる仕組みを用意する。
これらが欠けていると、AIエージェントはそもそも商品を「認識できない」とされています。自社サイトがAIからどう見えているかを点検したい場合は、AIOチェッカーのようなツールで現状を可視化するところから始めると、打ち手を絞りやすくなります。
EC運営者への示唆
日本国内ではAIの導入済み企業はまだ約13%にとどまり、多くの事業者が検討・情報収集の段階にあります。裏を返せば、今から準備を進めれば先行者になれる余地が大きいということです。
まずは大規模な投資を伴わない範囲で、商品ページの構造化データを整え、レビューや在庫情報を最新に保つことから着手するのが現実的です。AI経由の流入や購入は、現時点では全体の一部にすぎませんが、伸び率の大きさを踏まえると、対応の有無が数年後の差につながる可能性があります。
まとめ
エージェントコマースは、「検索されて選ばれる」から「AIに選ばれる」への転換を促しています。AI経由の購入はまだ黎明期ですが、主要プラットフォームの実装が出そろい、実際の売上を動かし始めました。EC運営者にできる最初の一歩は、AIが商品を正しく読み取れるようデータを整えることです。流入減という守りと、AI推薦という攻めの両面から、自社サイトの現状を早めに把握しておくことをおすすめします。
