OpenAIが2026年2月に鳴り物入りで発表した「Buy it in ChatGPT」機能が、わずか数ヶ月で方針転換を迫られました。ChatGPT内で決済まで完結する「Instant Checkout」が事実上撤回され、EC運営者の間で注目を集めています。チャット画面での購入体験は本当に普及するのか、今回の出来事は今後のAI経由の集客戦略を考える上で重要な材料です。
何が起きたのか
- OpenAIは2026年2月、ChatGPT内で買い物が完結する「Buy it in ChatGPT」機能を開始しました。Stripeと共同開発した新しい決済の仕組み「Agentic Commerce Protocol(ACP、AIエージェントが商品購入を代行するための共通ルール)」を採用し、Etsyの出品者が対応済み、Shopify加盟店も100万以上が対応予定という急拡大でした。
- しかし発表からわずか1ヶ月後の3月、OpenAIは方針を転換しました。Shopifyの数百万の加盟店のうち、Instant Checkoutを実際に稼働させたのは30店舗未満にとどまっていたと報じられています。
- 商品数が限定的で、最新の在庫情報が反映されないケースもあったことが不振の一因とされています。
OpenAIの新しい方針
- OpenAIはInstant Checkoutから離れ、商品の発見・比較をしやすくする新しい購入体験へ刷新すると発表しました。
- 今後の購入は、ChatGPTモバイルアプリ内のブラウザや別タブで、加盟店自身のオンラインストアを通じて完了する形に移行します。
- つまりOpenAIは、チャット内での決済そのものから距離を置き、購入は加盟店のアプリやサイトを通じて行う方向に舵を切ったことになります。
なぜ短期間で撤回されたのか
- 商品数や在庫情報の不足という技術的な課題に加え、チャット画面という限られたUI(ユーザーインターフェース、画面上の操作部分)の中で決済まで完結させる体験自体が、消費者や加盟店にまだ受け入れられていなかった可能性があります。
- 加盟店側にとっても、自社サイトを経由しない販売は、顧客データの取得やブランド体験の管理が難しくなるという懸念があったと考えられます。
EC運営者への示唆
- 「チャット内完結の購入体験」は現時点では時期尚早だったと言えます。今後主流になるのは「AIで発見・比較し、購入は自社サイトで行う」という役割分担(Discover in AI, Buy on Site)です。
- EC事業者は、ChatGPTなどAIエージェントが商品を正しく認識し、自社サイトへスムーズに誘導できる導線づくりを優先すべきです。具体的には、商品フィード(商品情報をAIやツールに読み込ませるためのデータ一覧)の最適化と、AIエージェント向けの構造化データ(機械が内容を理解しやすいよう整理した情報)への対応が挙げられます。
- 自社サイトがAIからの評価や引用にどう見えているかを把握することも重要です。AIOチェッカーのようなツールで、自社サイトがAI検索やAIエージェントにどのように認識されているかを確認しておくと、今後の対応の判断材料になります。
まとめ
OpenAIのInstant Checkout撤回は、AIチェックアウトがまだ発展途上であることを示しています。EC運営者にとって重要なのは、チャット内決済の動向を注視しつつも、まずはAIエージェントからの流入を自社サイトへ確実につなげる基盤を整えることです。今回の方針転換は、性急な対応よりも着実な導線整備の重要性を改めて示した事例と言えます。
参考
- OpenAI revamps shopping experience in ChatGPT after Instant Checkout - CNBC
- OpenAI shifts checkout plans amid agentic commerce strategy - Digital Commerce 360
- OpenAI agentic shopping: Etsy, Shopify, Walmart, Amazon - CNBC
- Shop 'til you bot: Google, OpenAI and the race to build agentic commerce - Fast Company
