ここ最近のAI×ECの話題は、OpenAIの「Instant Checkout」をめぐる動きに集中していました。ただ、AIが買い物を変えている現場は他にもあります。実際に数字で成果が出ているのは、いま自社サービス内にAIを組み込んでいる楽天やAmazonのような大手プラットフォームです。今回は、この2社の直近の動きと、そこからEC運営者が読み取れる示唆を整理します。
楽天の「AIコンシェルジュ」は注文額を約17%押し上げた
楽天は2025年7月に「Rakuten AI」の本格提供を開始し、同年12月に「楽天市場」へAIコンシェルジュを搭載しました。会話形式で買い物をアシストする機能です。
- 曖昧な質問からユーザーの意図をくみ取り、商品を提案する
- 70以上の自社サービスにまたがる約1億会員のデータを活用している
- 購入決定までの時間が約41%短縮された
- 平均注文金額が約17%増加した
特徴的なのは、使われ方です。ギフト選びのように「買いたいモノのイメージが明確でない」場面での利用が多いと報告されています。検索キーワードが思い浮かばない買い物こそ、対話型AIの出番だということです。あわせて、動画を使った「ディスカバリーレコメンデーション」(発見を促すおすすめ表示)でも、静止画より高いクリック率が確認されています。
Amazonは「Rufus」を「Alexa for Shopping」に統合した
Amazonは2026年5月13日、生成AIショッピングアシスタント「Rufus」を「Alexa for Shopping」へ改名し、音声アシスタントのAlexa+と統合すると発表しました。アプリ・サイト・Echoデバイスをまたいで、商品リサーチと購買を一本化する狙いです。
Amazonが公表している利用実績は次のとおりです。
- 年間の利用者は2.5億人以上
- 月平均利用者は前年比149%増、対話回数は210%増
- 買い物中にRufusを使った顧客は、その買い物で購入に至る可能性が60%以上高い
機能面では、30日・90日の価格推移の確認、価格アラート、手書きの買い物リストの読み取り(iOS)、他社サイトの商品を代理購入する「Buy for Me」などが加わっています。「聞いて選ぶ」から「任せる」方向へ、一段進んでいます。
共通しているのは「意図を引き出す」設計
楽天とAmazonの取り組みは、規模もデータ基盤も違いますが、向いている方向は同じです。
- キーワード検索では表現しきれない曖昧なニーズを、対話で言語化させる
- 自社が持つ購買履歴・会員データと組み合わせて提案の精度を上げる
- その結果として、客単価と購入率が上がる
つまりAIは、集客の手段であると同時に「サイト内の接客」を変える技術でもあります。生成AI検索対策(AIO)※の話題が先行しがちですが、流入したあとの体験にも同じ変化が起きています。
※AIO:生成AIの回答内で自社の情報が正しく引用・紹介されるようにサイトを整えること
EC運営者への示唆
大手と同じ規模の投資はできなくても、着手できることはあります。
- 曖昧な検索を拾う導線をつくる:サイト内検索のゼロ件ヒット結果を確認し、キーワードが定まっていない訪問者がどこで離脱しているかを把握する
- ギフト・用途起点の分類を用意する:「誰に」「どんな場面で」で選べる導線は、対話型AIが得意とする領域を人力で近似できる
- 商品データを整える:素材・サイズ・用途・利用シーンなどの属性が構造化されていれば、自社サイト内のレコメンドにも、外部AIの引用にも同じデータが効く
- モールに出店しているなら、モール内AIの評価材料を意識する:楽天市場やAmazonのAI提案は、商品情報とレビューを材料にしています。商品ページの記述精度がそのまま露出に影響します
自社サイトがAIからどう読み取られているかを把握したい場合は、AIOチェッカーで現状を確認したうえで、優先順位を決めるのが現実的です。
まとめ
OpenAIのチャット内決済は一度足踏みしましたが、AIによる購買体験の変化そのものは止まっていません。楽天は注文額17%増、Amazonは利用者2.5億人以上という具体的な数字を出しています。派手なプロトコル対応の前に、商品データと接客導線を整えることが、どちらの流れにも効く投資になります。
なお楽天は2026年8月5日から、最新のAI・技術を体験できるイベント「Rakuten AI Optimism」をパシフィコ横浜で開催しています。国内の動向を把握する材料として、あわせて確認しておくとよいでしょう。
参考
- 楽天、会話型の「AIコンシェルジュ」で注文額17%増。買い物体験をどう変えた? | ネットショップ担当者フォーラム
- Amazon Rufus: Amazon's AI shopping assistant gets smarter and more personal | About Amazon
- Amazon ditches Rufus chatbot, launches Alexa shopping agent in AI strategy pivot | CNBC
- 楽天の最新AIやテクノロジーを体験できる「Rakuten AI Optimism」、今日からスタート | ネットショップ担当者フォーラム
