なぜ今「AIエージェント購入」が注目されているのか
AIエージェントとは、ユーザーに代わって商品検索や購入手続きを自動で行うAIプログラムのことです。ChatGPTの購入機能やAmazon Rufusの自動購入拡張など、各社がエージェント対応を急速に進めています。PYMNTS Intelligenceの調査「Will the 2026 Shopping Season Go Agentic?」によると、米国でAI利用による購入経験者は約1億3200万人に達し、5840万人がオンライン購入調査をAIツールから開始しています。こうした中、米Walmartが11月にlaunch予定の新機能「Agent Profiles」が、購入ルール整備の具体例として注目を集めています。
Walmartの「Agent Profiles」とは
Walmartが発表したAgent Profilesは、AIエージェント経由の購入に「人間による制御」を組み込む仕組みです。具体的には以下の特徴があります。
- 顧客はエージェントの支出上限を50ドル、100ドル、200ドルから設定できる
- 上限を設けず、注文ごとに人間が承認する運用も選択可能
- エージェントは顧客のカード情報そのものを閲覧できない設計になっている
これは「エージェントに任せつつも、最終判断は人間が握る」という設計思想を反映したものです。
業界全体で進む購入ルールづくり
PYMNTS Intelligenceが米国の大手EC意思決定者60名を対象に実施した調査「The Agent Advantage」(2025年8月実施)でも、AIエージェント経由の購入に関するルール作りが業界全体で進行中であることが示されています。Walmart以外にもHome Depotなどが独自のルール設計に動いており、支出上限や承認フローは今後の業界標準になる可能性があります。
Amazonは逆方向:外部エージェントを遮断
一方でAmazonは異なる路線を取っています。ChatGPTの購入機能連携やRufusの自動購入機能拡張を自社内で進めつつ、外部のAIエージェントからの自社サイトへのアクセスは遮断する方針です。エージェント経由の購買体験を「自社プラットフォーム内で完結させる」戦略と言えます。各社の対応が分かれていることは、EC運営者にとって今後の標準がまだ流動的であることを示しています。
消費者はまだ「全権委任」に慎重
AIエージェントの利用が拡大する一方、消費者の意識には変化が見られます。PYMNTS Intelligenceの調査では、検索から購入まですべてをエージェントに任せたいという意向は、2025年9月の32%から2026年8月には24%に低下しています。これは、AIエージェントの利便性を評価しつつも、購入という最終行為には人間の関与を残したいという消費者心理の表れと考えられます。Walmartの支出上限・承認フローは、こうした消費者心理に応える設計とも言えるでしょう。
EC運営者への示唆
今回のデータから、EC運営者が検討すべき点は以下の通りです。
- AIエージェント経由の購入に対応するAPI連携を早期に検討する
- 支出上限設定や注文ごとの承認フローなど、決済権限の設計を見直す
- 自社サイトを外部エージェントに開放するか、Amazonのように遮断するか、方針を明確にする
- 自社サイトがAIエージェントや検索AIにどう認識されているかを把握するため、AIOチェッカーなどのツールで現状を確認する
エージェント対応は「全面開放」か「全面遮断」かの二択ではなく、Walmartのように人間の確認を組み込んだ中間的な設計が現実的な選択肢になりつつあります。
まとめ
WalmartのAgent Profilesは、AIエージェント購入時代における「人間の最終確認」を組み込んだ具体的な事例です。業界全体で購入ルールづくりが進む一方、Amazonのように外部エージェントを遮断する企業もあり、対応方針は分かれています。消費者側も「全権委任」にはまだ慎重な姿勢を見せており、支出上限や承認フローの設計が今後のEC運営において重要な検討課題になると考えられます。
